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令和元年司法試験 再現まとめ

令和元年司法試験 倒産法第1問 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 倒産法第2問 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 憲法 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 行政法 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 民法 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 商法 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 民事訴訟法 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 刑法 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 刑事訴訟法 再現答案 - 氏名黙秘

令和元年司法試験 刑法 再現答案

第1 設問1

1 甲がAに対して、本件キャッシュカード等が入った封筒を封印するため、印鑑を取ってくるよう申し向けた行為について、詐欺罪が成立しないか(刑法(以下略)246条1項)。

(1) まず、本件キャッカード等はキャッシュカードとその暗証番号から構成されている。暗証番号を知っていれば、本件キャッシュカードを用いて自由にAの口座から預金を引き出すことが可能となるから、本件キャッシュカード等は財産的価値を有し、「財物」に当たる。

(2) 欺罔行為とは、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることをいう。

ア 詐欺罪は交付罪である以上、交付意思を要するが、それは財物の移転を外形的に認識することで足りる。Aは一時的ではあるものの、甲に本件キャッシュカード等が入った封筒の処分を委ねており、甲は本件キャッシュカード等が入った封筒を持ち逃げすることができる以上、Aは財物の移転を外形的に認識しているといえ、交付意思は認められる。

イ 本件キャッシュカード等が入った封筒をダミー封筒とすり替えるという事実は、Aが本件キャッシュカード等の入った封筒を甲に委ねるかの判断の基礎となる事項であり、仮にダミー封筒と取り替えられれば、Aは甲に自己の口座から自由に預金を引き出され、財産的損害を被る。そのため、甲の上記行為は欺罔行為に当たる。

ウ たしかに、未だAの家の中ではあるが、甲はダミー封筒とすり替え、本件キャッシュカード等が入った封筒をショルダーバッグに入れた時点で、Aはダミー封筒に気づくことは事実上不可能であることから、占有を取得したといえる。

エ 上記行為により、Aは錯誤に陥り、甲に一時的に処分を委ね、甲は占有を取得している。

(3) 以上より、甲は詐欺罪が成立する。…(a)

2 甲が本件キャッシュカードを挿入して現金を引き出そうとした行為について窃盗未遂罪(243条、235条)が成立しないか。

(1) 本件では、Aの口座は取引停止措置が講じられており、上記行為により現金を引き出すことは不可能であったことから、上記行為は結果発生の現実的危険性がないとして不能犯とならないか。

ア 刑法の保護は一般人の安心感ではなく、法益侵害及びその危険性を防止する点に機能を有する。そのため、危険性の有無は、それがあれば結果が発生したであろう仮定的事実の有無の存在可能性の有無で判断すべきである。

イ Aは高齢であり、甲の詐欺は巧妙であったことから、犯行翌日までにAが甲の欺罔行為を不審に感じないまま警察に相談せず、取引停止措置が講じられないことは十分に可能性がある。そのため、取引停止措置が講じられず預金を引き出すことができたという仮定的事実の存在可能性は十分にある以上、危険性は認められる。

(2) そうだとしても上記行為の時点で「実行に着手」したといえるのか(43条本文)。

ア 文言及び結果の現実的危険性という未遂犯の処罰根拠より、①実行行為に密接で、②結果の現実的危険性を有する行為を開始した時点で実行の着手を認める。

イ 甲は暗証番号を知っており、上記行為を行えば、特段の支障なく、Aの口座から現金を引き出すことができる以上、上記①、②は満たす。

(3) 以上より、甲は窃盗未遂罪が成立する。…(b)

3 甲は(a)、(b)が成立し、両者は被害者が異なるので、併合罪となる(45条前段)。

第2 設問2

1 乙がCに対してナイフを示して脅迫した行為について、事後強盗罪の共同正犯が成立するとの立場(60条、238条)

(1) 共同正犯の要件は①共謀、②共謀に基づく実行行為である。

ア 甲はCによる逮捕を免れるため、乙は甲が商品を取り返されないようにするためにCに反抗することを合意している。共同正犯は犯罪を共同する点に本質があるところ、両者は主観にズレがあるものの、共に事後強盗罪の構成要件に当たる以上、事後強盗罪の共謀は認められる。

イ 「脅迫」とは、238条所定の脅迫が強盗罪の脅迫と同視しうるという同条の法意より、①窃盗の機会に行われ、②犯行を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。

 甲は犯行場所でCに追跡されており、未だ被害者の支配領域から脱出して安全領域に入ったといえないから、窃盗の機会は認められる(①充足)。

 乙は、刃体の長さ10㎝という殺傷能力の高いナイフを示して、「ぶっ殺すぞ」と言っており、これはCをして生命侵害の危険性を予期させるものであるから、犯行を抑圧するに足りる程度の害悪の告知といえ、「脅迫」に当たる。

(2) 甲は事後強盗罪が成立するところ、事後強盗罪は真正身分犯であるから、65条の適用により、乙は事後強盗罪の共同正犯が成立しないか。

ア 「共犯」とは共同正犯も含み、文言の忠実性、基準の明確性から、65条1項は真正身分犯、2項は不真正身分犯の成立と科刑について規定したものである。

イ したがって、65条1項により、乙は事後強盗罪の共同正犯が成立し、甲との間で共同正犯となる。

2 上記行為について、脅迫罪の限度で共同正犯が成立するとの立場(60条、222条1項)

(1) 事後強盗罪は窃盗と脅迫の結合犯であり、ここでは65条の適用は問題とならない。むしろここでは、実行行為の途中から加担した乙に承継的共同正犯が成立するかが問題となる。

ア 共同正犯の処罰根拠は結果に対する因果性にある。そこで、後行行為者が先行行為者の先行行為によって生じた効果を利用して結果に因果性を与えたといえるなら、承継的共同正犯を認め、先行行為についても責任を負うと考える。

イ 窃盗は既に終了しており、その後に加担した乙はそれに因果性を与えることは不可能である以上、承継的共同正犯は成立しない。

(2) 乙は、Cの「生命、身体」に害悪の告知をしており、「脅迫」したといえるから、脅迫罪の共同正犯が甲との間で成立する。

3 私見

1 両者の立場は、事後強盗罪の性質についてどう捉えるかによって生じるものである。

 238条は「窃盗が」としており、これは窃盗犯しか行えないという真正身分犯であると考えることが文理解釈として自然である。また、仮に事後強盗罪を結合犯と解すれば、窃取行為の時点で事後強盗罪の実行行為の着手を認めることになるが、これはあまりにも未遂犯を早く成立させるものであり、相当でない。したがって、事後強盗罪は窃盗犯しか行えない真正身分犯と考えるのが妥当である。

2 したがって、上記1のとおり、乙は事後強盗罪の共同正犯が成立する。

第3 設問3

1 正当防衛(36条1項)

丙のボトルワインを投げつける行為は傷害罪に当たるが、これは正当防衛により違法性が阻却されないか。

しかし、Dは何ら不法な行為をしておらず、「不正」対「正」の関係にはならない以上、正当防衛は成立しない。

2 緊急避難(37条1項)

 丙の上記行為は、緊急避難により違法性が阻却されないか。

(1) 37条1項は「他人の」としており、法益均衡を要求していることから、緊急避難は違法性阻却事由である。

(2) 「現在の危難」とは、不法な法益侵害が現に存在し、又は間近に押し迫っていることをいう。Dは甲に対してナイフを胸元に突き出されており、生命侵害の危険が間近に押し迫っているといえるから、「現在の危難」が認められる。

(3) 「やむを得ずにした行為」とは、防御方法が唯一の手段であることを要する。丙の行為は防御方法として唯一の方法であるからかかる要件を満たす。

(4) 本件では、「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった」といえるか。本件では、他人の法益を守るために第三者に被害が及んだという典型的な緊急避難と異なり、被害者を守ろうとしたら被害者に被害が及んだという問題がある。結果的に見れば、丙の行為は誰の法益も守れなかったことになるが、これは緊急避難として正当化してよいのか。

 しかし、結果論的に緊急避難を否定すれば、国民は処罰をおそれて他人の法益を守ろうとしなくなるおそれがあり、これは妥当でない。また、「Dの生命侵害のおそれ」対「Dに傷害を負わせた」という意味で「正」対「正」である上、法益均衡が認められるといえる。

(5) 以上より、緊急避難が成立し、丙の上記行為は違法性が阻却される。 以上

 

雑感

大 戦 犯 科 目 

正直他7科目が順調だったのと刑法は好きだったので残念でした

萎えてしまってあまり調べてませんが、簡単に思うところだけ

設問1

まず、窃盗未遂以降の記載一切いらないです。本問は、「Aに対する」としています。

じゃあなんでわざわざ問題文で引出しについて書いたのか。考えられるのは設問2の導入or間接占有でしょうか。しかし、後者の窃盗罪が否定されるのは実務上ゆるぎないところですし、おそらく前者だと個人的には思っています。うーん問題文はマーカー引く等して徹底した読み間違いミスを防いできたのですが、被害者限定されるのは予想してませんでした。(住居侵入除くとかはよく過去問でもあるのでわかってたのですが…)。

 

詐欺か窃盗かについてはいろんな考え方があると思いますが、理論的に詰めると窃盗のほうが分があると考えています。(以下参照)

(1)欺罔行為はどれなのか

まず、本件犯行の手口は、①「不正引き出しされてます、キャッシュカードの確認をさせてください」という電話で被害者の住所等を聞き出す→②実際に会いにいき、キャッシュカード+暗証番号を保管するよう申し向け、その場で封筒に入れる→③封印するために印鑑が必要と申し向ける→④取りに行ってる間にダミー封筒にすり替え、本物封筒を隠しいれる→⑤外に出る。

じゃあどれが欺罔行為に当たるのかと考えると、おそらく①、②で考えるのはかなり厳しい筋だと思います。となると、③しかここではないです。当たり前に思うかもしれませんが、まず、この欺罔行為をしっかり特定しているかは重要だと個人的に思っています。印鑑を持ってこさせる点が本件犯行の中核をなすといっても過言ではないと思います。

(2)財物性

暗証番号は「メモ」なので口頭で吐かせる事案ではないことに注意が必要です。キャッシュカード+暗証番号のメモで自由に預金を引き出せる地位を得ることができることから、財物性は認めるのが一般的でしょう。

(3)処分意思

欺罔行為は交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ったことをいい、交付行為の危険性、財産的損害の危険性の二つを要します。

詐欺罪は交付罪ですから、処分意思を要すると考えるのが通説です。しかし、処分意思はかなり緩く認められます。旧司法試験H13問題2でも車の中でいったん確認させてくれと申し向ける行為について、大塚先生は「逃走の意思があることは知らないが、車に一人で乗せれば事実上乗り逃げが可能であることを一般的に認識している」として処分意思を認めています。(受験新法2018年2月号)

本問でも処分意思を肯定することはそこまでおかしくはないと思います。

仮に処分意思を否定する場合には詐欺未遂罪すら成立しないことに注意が必要です。(交付行為の危険性がないため)。

(4)処分行為

ここで参考となる判例は昭和26年12月14日判決です。ここで、最高裁は、「事実上自由に支配できる状態」=処分行為とみていると考えられます。これによれば、本件でも詐欺罪の肯定は容易です。

しかし、この判例には厳しい批判がなされています。すなわち、詐欺罪は交付罪なので、被害者の行為によって「直接」犯人に占有が移転する必要があるところ、被害者→事実上自由に支配できる状態→行為者の行為→占有取得という流れは、占有取得過程に行為者の行為が介在しているので、窃盗罪が成立するに過ぎないと。

この考えによると、本件で、一時的に事実上自由に支配できる状態で(=印鑑を取りに行った時点で)占有取得を認めれば、詐欺の既遂は成立します。他方で、入れた時点で占有取得を認めれば詐欺未遂+窃盗(包括一罪)の処理となります。

私は、バッグに入れた時点で占有取得を認めているので、やはり詐欺罪は成立させるべきではなかったと思います(上記判例の存在を考慮しても…)。

出来が悪い答案です

設問2

まず、事後強盗未遂罪ですね。窃盗未遂なの忘れてました…。

主観的な錯誤については、共謀段階で考慮する必要があります。具体的な事実の錯誤にすぎないので軽く済ませるのが答案戦略上いいと思いました。

「脅迫」の認定は特に問題とならないとでしょう。

①真正身分犯+65条1項⇔②結合犯+承継的共同正犯 or不真正身分犯+65条2項の処理ですね。

全部に言及することもできます(問題文参照)。

まあ特記することはないです。おそらく多くの方ができたであろう問題。論述の丁寧さで差がつく感じでしょうか。

まずますの答案だと思います。

 

設問3

手元の資料だけじゃよくわかりませんが、正当防衛、緊急避難、誤想防衛があげられると思います(他にもいろいろあるみたいですが)。

今振り返ると、たぶん要件充足性は聞いてないと思います。単純にどのようにして説明されるかだけを書いて、それに対する難点を書けば足りますねこれ。(ただ私のように安全策を取って書いていった人も多いと思います。)

正当防衛

多くの方が挙げたと思いますが、その理論上の説明をしっかりできた方は少ないと思います(私含め)。批判については分かりやすいと思うので多くの方ができたと思いますが。

緊急避難

これも正直よくわからないのですが、一応私が書いた内容の補足だけ。

防衛行為の結果が第三者に生じた場合だと、第三者の侵害をある一方で、守ろうとした者の法益は保護されたといえます。この場合緊急避難で処理することはそこまでおかしくないのではないかと思います(批判はありますが、基本刑法p183)。もっとも、本件の場合、防衛行為の結果が守ろうとした者に生じてしまっているため、法益が保護された者は実は一人もいないのではないか、という疑問が純粋に生じました。百選28の判例では、「客観的に緊急避難行為性を欠く」としていますが、これはこのようなことも考慮したのではないでしょうか。

もっとも、上記考えは、私の完全な独自論だと思いますので、おそらくいい点数はつかないと思います。

誤想防衛

なんで落としちゃったんですかね…。責任故意の阻却の問題ですね。丙は正当防衛の認識しかないので、違法性阻却事由の不存在についての認識が欠けており、反対動機の形成可能性がないので、責任故意を阻却します。あとは、過失犯が問題となるだけです。

難点は正直分からないです。

出来が悪い答案だと思います。

 

総評

D-Eと予想。予備の刑法は正直いくつか間違っていましたが、行けると思ってました。しかし、これに関してはいい評価つく気が全くしないです。

令和元年司法試験 倒産法第2問 再現答案

第1 設問1

1 裁判所は、民事再生法(以下略)169条1項各号の場合を除き、本件再生計画案を付議する。

2 (a)の主張

 C社は、本件再生計画案は、予想清算配当率よりも低い弁済率であり、清算価値保障原則に反すると主張する(169条1項3号、174条1項4号、①、③参照)

(1) 再生債務者に再度の投資リスクを負わせるのは相当ではないから、清算価値を下回る弁済率の定めは、174条1項4号違反となる。

本件では、平成30年4月25日時点では、予想清算配当率が10%であったところ、再生計画案直前では、予想清算配当率5%となっていることから、ここでは、予想清算配当率の基準時が問題となる。

ア 事業が成功するかは未確定であり、広く事業再生の機会を与えるべきであるから(1条)、予想清算配当率は再生手続開始時ではなく、再生計画案直前を基準日にすべきと考える。再生手続開始時点で事業が成功しないことが明らかなのであれば、25条2号により棄却すれば足りる。

イ 本件では、再生計画案直前の業績及び財産状況を前提とすれば、予想清算配当率は5%と見込まれており、①、③はこれを下回るものではないから、清算価値保障原則には反しない。

(2) 以上より、(a)の主張は認められない。

3 (b)の主張

 C社は、本件再生計画案は、B社をC社よりも劣後に扱わないことは、実質的平等に反するとの主張を行う(169条1項3号、174条2項1号、155条1項本文)。

(1) 155条1項但書は、「差を設けても衡平を害しない」なら、差別することを許容している。そのため、155条1項本文は実質的平等を定めたものと解される。したがって、再生手続に至った経緯、帰責性、再生債権の取得経緯等を考慮し、本来差を設けるべきところ、差を設けていないなら、実質的平等に反する(155条1項本文)。

(2) 本件でA社が支払不能に陥ったのは、㋐無謀な設備投資を続けたこと、㋑取引先の甲社が破産したことにより売掛債権が回収不能になったことが主な原因である。両方ともB社の指示によりなされたものであるところ、㋑は経営判断の失敗といえ、帰責性は小さいものの、少なくとも㋐に関してはB社の帰責性は大きい。

また、B社は、A社の完全親会社であり、A社の取締役の過半数はB社からの出向者で、A社社長はB社が指名していることから、B社はA社を支配しているといえる。

加えて、C社は、㋐を危惧してA社との取引を停止していたところ、B社からの説得を受け、取引を開始し、再生債権を取得している。そのため、C社は、B社の説得がなければ、再生債権を取得することはなかったといえる。

以上のことを踏まえれば、A社の支払不能の主な原因はB社であり、C社よりも劣後的に扱うべきである。

(3) したがって、本件再生計画案①、③は、差を設けるべきところ、差を設けていないとして、実質的平等に反する(155条1項本文)。

4 以上より、169条1項3号の該当性が認められ(174条2項1号、155条1項本文)、裁判所は、本件再生計画案を付議すべきでない。

第2 設問2

1 小問(1)

(1) まず、A社は42条1項1号に基づき、裁判所の許可を得る必要がある。

「事業再生のために必要であると認める場合」とは、速やかに事業譲渡しないと、事業価値が毀損してしまう場合をいい、再生債務者のもとで事業再生される必要はない(1条参照)。本件では、A社の事業は速やかに譲渡しないと顧客離れに伴う事業価値の毀損のおそれがあるから、かかる要件を満たす。そして、裁判所は、再生債権者、労働組合の意見を聴かなければならない(同2項、3項)。これは、事業譲渡について利害関係を有する者に配慮するためである。

(2) 完全親会社のB社が反対している以上、本件事業譲渡につき、会社法467条1項1号、309条2項11号の決議要件を満たさない。そのため、A社は43条1項の許可を得る必要がある。

まず、A社は、支払不能にあり、「財産をもって債務を完済することができない」。次に、「事業の継続のために必要である」とは、株主保護の観点から厳格に考えるべきである。本件では、上記のとおり、速やかに事業譲渡しなければ、事業価値の毀損のおそれがある以上、かかる要件を満たす。そして、決定の要旨は株主に送達される(同2項)。

2 小問(2)

C社が債権者集会において同意しない以上、再生計画案は否決される(172条の3第1項1号)。そこで、A社はC社の賛成を得るべく、裁判所の許可を得た上、「再生債権者に不利な影響を与えない」限りで、再生計画案の変更をする(172条の4)。C社の賛成を得た場合には、A社は172条の5の申立てにより、再生計画案の再度の決議をすることとなる(同1号)。なお、付議されている以上、167条により修正することはできない。

もっとも、以上の方法によってもなお否決された場合には、裁判所は職権で再生手続の廃止の決定をする(191条3号)。 以上

 

雑感

過去問でみたことあるものもあれば、初見問題もいくつかありました。いい問題です。

第1問同様、聞かれてなくても趣旨、意味、目的はなるべく書くようにしました。

設問1

清算価値保障原則 問題文からするに基準日が問題でしょう。

自分の家にある本じゃ載ってなかったので、ぐぐってでてきたものを参考にして考えてみます。おそらく多くの方が考えたことない問題だったと思います。

開始時説VS認可時説は結局のところ、事業再生後の価格の変動についての再生債権者の利益と再生債務者の利益の考量が問題となっています。

仮に価格が下がった場合を考えてみます。(たとえ再生債務者の帰責性がないような市場変動が原因だとしても)開始時説によれば清算価値保障原則をクリアすることは事実上不可能なため、牽連破産に陥ることが通常でしょう。他方で、認可時説によれば、そうした懸念は多少無くせると思います。

開始時説は再生債権者のいわば付き合ってあげてるんだから、そんなリスクなんでこっちが負わされなくちゃいけねえんだよという主張を認める形ですね。こうした主張も十分納得できるところです。

他方で、価格が上がった場合には、認可時説によると、がんばっても弁済多くなるだけなので再生債務者のインセンティブの観点から問題です。開始時説によれば、頑張った分だけ、再生債務者の得になります。

実務は開始時説によるとしていますが、これを知っている人は稀だと思われますし、考査委員も現場思考がなされることを前提にしていると思います。そのため、理由がしっかりしていればどちらをとっても問題はないでしょう。

本件では価格が下がった場合ですから、現場思考だとどうしても認可時説によりがちになることが予想されます。私は、広く再生の機会を与えるべきと主張して認可時説になりました。

もっとも認可時説を採った方は再生債務者の帰責性によって下がった場合や、明らかに下がることが見込まれる場合への対処をどう考えるかも示すといいと個人的には思いました。自分は後者について25条2号の処理で足りるとしていますが、信義則等も考えられます(係属しないとだめですが、おそらく債権者は申し立てるでと思い、そうしましたが、間違ってる可能性も大)。

正直よくわからないです、後日修正の可能性大。

 

実質的平等違反についてはあてはめ勝負ですね。憲法の過去問で平等で扱うべきでないのに平等で扱ったという問題がありましたから、それを意識してみました。

 

設問1はまずますといったところでしょうか。

設問2(1)

過去問で見たことあるやつですね。42条、43条のやつです。時間も紙もなかったので、コンパクトになっちゃいました。最低限の三段論法と43条の債務超過だけは注意しました。即時抗告も注目すべき点ではありますから書いとけばよかったかもしれません。

普通の出来と予想。

設問2(2)

よくわからない問題。問題文を言い換えれば、再生計画案が付議されたにもかかわらず可決されなかった場合の手続の帰すうです。

概説p.452に少し載っているのをみると、この場合やはりA社としては、変更したり(172条の4)、期日を続行して十分な説明をすることで(172条の5)、C社の理解を得ようと試みます。無理なら廃止→牽連破産の流れですね。167条は最初に思いつきましたが、今回は使えないので一応書いちゃいました。牽連破産書くべきでした。たしか過去にも採点実感で指摘されてた気がします。

まあ、なんだかんだ普通の出来と予想。

総評

細かいところはいろいろ指摘できますが、大筋は外していなくまあまあの出来だと思う。とりあえず、選択科目で足引っ張ることはないと思っている…。選択科目は他の人がどんな感じのこと書いたのかよくわからないので、自分の勘違いがあったら怖いです。

令和元年司法試験 倒産法第1問 再現答案

第1 設問1

1 平成30年3月20日、B社は、A社の依頼を受けて、A社に代わって租税債権を納付しており、費用償還請求権を取得している(民法650条1項)。これは、「破産手続開始前の原因に」基づいて生じた「財産上の請求権」であり、破産債権に当たる(破産法(以下略)2条5項)。

2 他方で、B社は上記弁済により国がA社に対して有する租税債権について、代位することができる(501条、499条)。そして、国がA社に対して有する租税債権は「破産手続開始時前の原因に基づいて生じた租税等の請求権」であって、「破産手続開始当時」「納期限」が到来していないものなので、財団債権である(148条1項3号)。

よって、B社は、財団債権として扱ってもらうよう主張することが考えられる。

3 これに対し、Xは、B社が有する債権は破産債権である以上、B社は破産債権としてしか行使できないと主張することが想定される。

(1) 弁済による代位は、求償権を確保すべく、原債権を担保として、その範囲内で原債権の行使を認めるものである。また、原債権が財団債権である以上、随時優先弁済されることは当初から予定されており(151条、2条7項)、財団債権として扱っても他の破産債権者に不当な不利益を与えるものではない。そのため、求償権が破産債権であっても、原債権が財団債権である以上、財団債権として行使することができるというべきである。

(2) したがって、B社は、破産手続において、随時優先弁済を受けることができる(151条、2条7項)。

第2 設問2

1 小問(1)

本件建築工事請負契約は、A社の本件建築工事の完成という債務とCの800万円の報酬支払債務が共に未履行であり、双方未履行双務契約に当たる(53条1項)。

(1) 53条1項の趣旨は、破産者と相手方の公平性を図るべく、履行するか解除するかの選択権を破産管財人に与え、履行の選択をした場合には相手方の請求権を財団債権として保護する点にある(148条1項7号)。

この趣旨は、請負人破産の場合の請負契約にも妥当するため、53条1項の適用は認められる。

(2) Xは、A社において本件建築工事を完成させることが破産財団の利益になると判断していることから、本件建築工事請負契約について履行を選択する。その際には、裁判所の許可を要する(78条2項9号)。これは、破産手続においては清算することが原則であるから、履行させることの必要性があるかについては、裁判所が後見的な見地から審査をすべきという趣旨である。

(3) 以上より、Xは裁判所の許可を得た上で、A社に本件建築工事の履行をさせ、Cに対して800万円の報酬請求をすることとなる。

2 小問(2)

(1) Xの本件建築工事請負契約の解除は、本件建築工事の代替性がある以上、残工事部分についてのみ生じる。そしてXの解除により、①Cは残工事を800万円で完成できたところ、1000万円支払っているから、差額の200万円について損害が生じている。また、②Cは建築廃材の撤去のため100万円の費用を支出している。

(2) ①は、破産債権として行使できる(54条1項)。他方、②は、本来CではなくA社が撤去義務を負うべきところ、Cが代わりに撤去した際の費用であり、これは建築廃材から生じる損害を防ぐ点でA社にとって利益があるから、「事務管理」により「破産手続き開始後に」「破産財団に対して生じた請求権」といえ、破産債権者の共同利益であることから、財団債権として保護される(148条1項5号)。

(3) よって、Cは、①については、破産債権として、届出・調査・確定を経て配当を受けることになり(100条1項)、②については、財団債権として、随時優先弁済を受けることとなる(151条、2条7項)。

第3 設問3

裁判所は、Fが破産債権者として行使できる破産債権の額について判断すべきである(125条1項)。ここでは104条1項、2項、4項が問題となる。

(1) 104条1項、2項は、責任財産の拡張に努めた者を保護すべく、全部履行義務者がいても破産手続開始時の債権の全額について権利行使できるとし、全部履行義務者が破産手続開始後に一部弁済をしても、全額権利行使できるとしている。

(2) 破産手続開始時において、平成30年3月27日のFの弁済により、E銀行はA社に対して6450万円の貸付債権を有している。そして、手続開始後にFはEに200万円弁済しているが、それは一部弁済にすぎない。そのため、E銀行は6450万円全額について破産債権者として行使でき、Fは200万円については破産債権者として行使できない(104条4項)。

(3) したがって、Fは300万円についてのみ破産債権者として行使することができると裁判所は判断すべきである。 以上

 

雑感

基本的な問題のみと思いきや、隠れた罠がいくつもありました。

聞かれてなさそうに思えてもひたすら趣旨、意味を書くことを意識しました。

設問1

租税債権という文字で終わったと思った人は私だけではないでしょう。

類似判例は百選48①だと思います。しかし、ここでは、租税債権というのが大きな違いで、これで結論が左右されます。(詳しくは、倒産法概説p90以下参照)

このことを深く掘り下げた答案は評価されると思います。もっとも、予想では5通もないと思いますが…(書けた人は跳ね上がると思います)。私は見ればわかるとおり書けてません。

あと注意すべき点は、保証人ではないので費用償還請求権となることぐらいでしょうか。私は499条にしてますが、500条が正解です。

普通の出来と予想。

設問2小問(1)

なんか過去問で見たことがある問題。

一部解除であることを論じた上で、請負人破産の53条の適用は学説の批判も強いので、軽く触れました。ここでは履行するとされており、代替性の論証は不要だと思ったので書きませんでした(倒産法処理入門p.95参照)。

裁判所の許可は、再生手続では解除する場合に、破産手続では継続する場合に必要です。その理解も答案上に示しました。

普通の出来だと思います。

設問2小問(2)

解除した場合の問題です。

損害は、800万円でも1000万円でもなく差額である200万円です。撤去費用の100万円については事務処理費用でしょう(旧司法試験民法の冷蔵庫問題をなんとなく思い出しました)。財団債権として保護される理由も軽く触れました。

基本問題ですね。普通の出来だと思います。

設問3

「手続開始時」現存額主義の問題。

手続開始時が基準なので、300万円はFが行使でき、200万円はだめです。

基本中の基本ですが、引っ掛かる人は引っ掛かるような気もします。

普通の出来だと思います。

 

総評

倒産法受験者のレベルは高いことが模試を受けてわかっているので、あまり点数は伸びないと思います。ただやらかしはそこまでないので、浮上してほしいですね。

令和元年司法試験 憲法 再現答案

第1 表現の自由

1 法6条1項、法25条は、表現の自由を侵害し(憲法(以下略)21条1項)、違憲とならないか。

2 虚偽表現の自由は同項により保障されないという意見が想定される。しかし、虚偽表現であっても、ジョークやネタ等を通じて自己の人格を形成・発展に資する点で自己実現の価値があるため、同項により保障されるというべきである。

法6条1項は、虚偽表現をすることを禁止しており、表現の自由の制約が認められる。

3(1) 上記のとおり、虚偽表現であっても自己実現の価値を有する。他方で、政治的意思決定については阻害する効果を有するから、自己統治の価値を有しない。

(2) 法6条1項は、虚偽表現を対象とする直接的制約であり、思想の自由市場を歪めるため、制約は強度である。また、法6条1項に反する場合の罰則が設けられていることから(法25条)、罰則をおそれて表現することを控える萎縮的効果を有する。

4(1) 以上より、法6条1項は、①重要な目的のため、②手段が実質的関連性を有しない限り、違憲となる。

(2) 法6条1項の目的は、虚偽表現が流布されることによる社会的混乱を防止するためである。現代社会は、SNS等の普及により、情報が早く伝達・拡散し、ソースのない表現が出回りやすいことを考慮すれば、かかる目的は重要といえる(①充足)。

(3) しかし、以下のとおり、手段の相当性を欠く。

たしかに、法6条1項は、「公共の利害に関する事実」と限定しているが、間違った情報は、政府やマスコミによる正しい情報の伝達で是正されるべきである。また、根拠ない事実に惑わされないよう呼びかける等、注意することでも十分上記目的は達成しうる。そのため、法6条1項が虚偽表現を一般的に禁止することは過度な制約である。よって、手段としての相当性を欠き、実質的関連性を欠く。

5 以上より、法6条1項は、表現の自由に反し、違憲である。

第2 明確性の原則

法6条1項は、表現の自由を制約するものであり、またそれに反する場合には罰則が設けられている(法25条)。そのため、明確性の原則が問題となる(31条)。

(1) 罪刑法定主義から、行政権の恣意を抑制しつつ、国民への公正な告知をすべく、明確性の原則が要求される(31条)。また、表現の自由を制約する場合には、萎縮的効果を避けるべく、明確性の原則が要求される(21条1項)。

明確性の原則に反するかは、具体的場合に、一般人をして当該規定が適用されるか判断できるかどうかで判断する(徳島公安条例事件)。

(2) 法6条1項は、「公共の利害に関する事実」とするのみである。これでは、抽象的で、いかなる場合に公共の利害に当たるか判断できない。少なくとも、具体的例示をもって明確にすべきである。

(3) 以上より、法6条1項は、明確性の原則に反し、具体的例示を設けるべきであると意見する。

第3 SNS事業者の表現の自由

1 法9条1項、2項、法26条は、SNS事業者の表現の自由を侵害し(21条1項)、違憲ではないか。

2 SNS事業者との関係では、営業の自由の制約にすぎないという反論が想定される。しかし、SNS事業者は、システムの構築等を通じて表現がどのように伝わるかを形成する地位を有するものであり、また、国民の知る自由に資するものであることから、SNS事業者についても表現の自由が保障される。

法9条2項は、表現の削除を規定するものであり、表現の自由を制約するものである。

3(1) 上記のとおり、虚偽表現は自己実現の価値を有する一方で、自己統治の価値を有しない。

(2) 9条2項は、虚偽表現を対象とする直接的制約である。もっとも、9条2項は段階的な制約であり、SNS事業者が処罰をおそれて(法26条)、虚偽表現でない表現まで削除するおそれは少ないといえる。また、補償もなされている(法13条)。

4(1) 以上より、法9条は、①目的が重要で、②手段が実質的関連性を有しない限り、違憲である。

(2) 法9条の目的は、選挙の公正が害されることを防ぐ点にある。これは重要な目的であるといえる。(在外邦人選挙権事件参照)

(3) そして、選挙に際して、虚偽表現がなされることで、候補者の評価が不当に下がり、選挙の公正上問題があることから、これを規制する必要性は認められる。そして、規制は選挙の際のみに限定されている。

しかし、上記目的からすれば、フェイク・ニュース委員会は内閣総理大臣やA大臣から独立した人で構成されるべきである。そうでないと、自己の政党の候補者に対しては、積極的に削除命令を出し、他方で他の政党の候補者に対しては削除命令を出さないとすることで、選挙を有利に進めるおそれがあるからである。しかし、法をみると、独立性に配慮された規定とはなっていない(法15条、16条)。したがって、手段としての相当性を欠き、実質的関連性を欠く。

5 以上より、法9条は、表現の自由に反し、違憲である。

第4 選挙の際の表現の自由

1 法9条1項、2項は、SNS利用者の表現の自由を侵害し(21条1項)、違憲ではないか。

2 上記のとおり、虚偽表現といえども、同項により保障される。そして、法9条2項により、表現が削除されれば、当該表現をした者の表現の自由は制約される。

3(1) 虚偽表現の自由について、自己実現の価値を有する一方で、自己統治の価値を有しないことは上記のとおりである。

(2) 法9条2項は、虚偽表現に着目して規制しており、直接的制約である。もっとも、削除されることで特に罰則等が設けられていないことから萎縮的効果は小さい。

また、法9条は、選挙の際のルールを定めたものであり、国会の裁量が認められる(44条、47条)。なお、在外邦人選挙権事件は、選挙権行使の制限に関するものであり、選挙の際の表現手段の規制である本件とは事案が異なる。

4(1) 以上より、法9条は、①重要な目的のため、②手段が実質的関連性を有しない限り、違憲である。

(2) 上記のとおり、法9条の目的は重要である。

(3) 虚偽表現が明白である場合に限って、それを規制することは、目的のため必要といえるものの、フェイクニュース委員会の独立性が確保されていない以上、手段としての相当性を欠き、実質的関連性を有しないことは上記のとおりである。

5 以上より、法9条は、21条1項に反し、違憲であり、フェイク・ニュース委員会が独立性を有するよう構築すべきと意見する。

第5 適正手続

法20条は、適正手続に反し(31条)、違憲ではないか。

1 31条は刑事手続に関する規定であるが、そのことをもって当然に行政手続にその趣旨が及ばないと解することは相当でない。そのため、権利の性質、重大性等を考慮し、行政手続の場合にも同条の趣旨が及ぶ場合がある(成田新法事件)。

2 法20条は行政手続法の定める事前手続を不要としている。ここで、SNSは瞬時に情報を伝達・拡散する性質を有することから、虚偽表現を速やかに削除する緊急の必要性があるとして、事前手続は不要であるとの意見が想定される。しかし、虚偽表現を削除すれば、自由市場により、ある程度是正されると考えられる。また、削除により制約されるのは表現の自由であり、その権利の重大性に鑑み、事前に弁解の機会を与えるべきである(第三者所有者没収事件も併せて参照)。

3 以上より、法20条は31条に反し、違憲である。 以上

 

雑感

憲法は苦手なのもあり、多くの方が私よりもはるかにできると思っているため、守りを固める方針で答案作成しました。とりあえず、特殊性だけは意識しようと心掛けました。

憲法については偉そうに言える立場でもないのですが、若干考察してみます。

SNS、選挙、虚偽表現、フェイク・ニュース委員会という点が大きな事案の特殊性だと感じました。

1.SNSについて

SNSは皆さんも知ってのとおり、根拠のない情報が瞬時に拡散・伝達されやすいという性質を有しています。(だからSNSに対して厳しい法案を今回は設けています)。

典型的な表現と異なる、SNSを深く掘り下げた答案は評価されると思います。自分は悪い面だけを述べており、良い面も述べるべきでした(安価で、効果的な表現方法のビラ配りよりもSNSの発信ってすごいのでは?という視点等)

2.選挙

選挙の際の表現規制とそうでない規制を比較していますね(法6条、法9条文言参照)。

この点に気づけてなおしっかりと述べられた答案は評価されると思います。(選挙の公正VS虚偽表現をする自由という対立を意識すれば、必ずしも表現の自由を優先させないという価値判断もありうるでしょう)

選挙については、判例表現の自由よりも選挙の公正さを優先させているイメージがなんとなくあります(百選161、162、163)。伊藤補足意見の選挙ルール論も持ち出せるのではないかと考え、私は少し触れました。

一方で、判例は選挙権の行使の制限についてはかなり厳しい態度を取っています(在外邦人選挙権事件、百選152)。考査委員である野坂先生の解説でも「選挙権の行使それ自体が制限されていることを重く見た」としています。本件では、表現の自由の規制といえども、それが選挙の際にとどまり、選挙の公正のためならおそらく判例は許すのではないでしょうか。

3.フェイク・ニュース委員会

選挙の公正を図るなら、どう考えてもフェイク・ニュース委員会の構成はおかしいと思います。たしかに、一定程度独立性を図ろうとする部分は見受けられますが(法15条4項)、内閣総理大臣はおろか国会議員が委員はさすがにだめでしょう。選挙管理委員会をはじめ、選挙と利害関係にない第三者のみで構成されるべきです。

仮に独立性がないなら、虚偽表現をあえて放置すること等により、自己の政党を選挙で有利に運ぶことが可能になってしまいますね。

 4.虚偽表現

虚偽表現といえど、ネタやジョークで言ったりする場合もあるなあと思って上記答案になりました。あんま深入りできませんでした。

 

こんなところでしょうか。自分の答案はとにかく広―く浅いという印象。特殊性には気づけたのにうまく表現できてない上、掘り下げられていない。こういう答案は予備で評価されないことは明らかです。評価はどうなるかわかりませんが、Cぐらいに思っています。

令和元年司法試験 行政法 再現答案

第1 設問1

1 後行処分たる本件取消訴訟において(行訴法(以下略)3条2項)、先行処分の本件事業認定の違法性を主張することはできるか。違法性の承継が問題となる。

2 取消訴訟の排他的管轄及び出訴期間を定め、早期の法律関係の安定性を図った14条1項の趣旨から、原則として違法性の承継は認められない。しかし、国民の実効的な権利救済の見地から、①先行処分と後行処分とが結合して1つの目的・効果を目指す場合であって、②先行処分の時点で取消訴訟を提起して違法性を争うことができたといえる程の手続保障があったといえないなら、例外的に違法性の承継を認めると考える。

3 B県の反論

(1) ①について、本件事業認定がなされても、収用裁決がなされるとは必ずしも限らず、任意買収にまずよることが予定されており、収用裁決はそれによることができなかった場合のいわば最終手段に位置づけられるものである。そのため、本件事業認定と収用裁決が結合して1つの目的・効果を目指すものとはいえない。

(2) ②について、本件事業認定がなされると、その旨が告示され(法26条、26条の2)、補償等について周知させるための措置が講じられる(28条の2)。そのため、本件事業認定があればAはそのことを知ることができ、その違法性を争うことは十分可能であるから、手続保障があったといえる。

4(1) ①について、事業認定は収用裁決が行われることを前提としてなされ、その要件となっており(法16条、18条4号、39条)、事業認定を行う際に収用裁決についても考慮され(20条)、収用裁決を行う際には、事業認定との差異が要件となっている(47条)。任意買収は収用裁決よりも穏当な手段であることから収用裁決前に行われるものにすぎず、あくまで収用裁決の存在を前提になされているものである。

 したがって、本件事業認定と収用裁決は結合して、土地を収用するという目的効果を目指すものである。(①充足)

(2) ②について、B県主張のとおり、本件事業認定がなされると、告示がなされDは本件事業認定の存在を知ることができる。上記のとおり、本件事業認定がなされれば、収用裁決がなされることは当然に予定されており、本件事業認定の違法性を争うことについては、収用裁決後によるべきという合理的理由はない。本件事業認定について争うのであれば、紛争は既に成熟化しており、Dは本件事業認定がなされた時点で取消素養を提起して違法性を争うことは十分可能であった。

 したがって、本件事業認定時点で取消訴訟を提起して違法性を争うことはできたといえ、手続保障があったといえるから、違法性の承継は認められない。(②不充足)

5 以上より、Aは本件取消訴訟において、本件事業認定の違法を主張することはできない。

第2 設問2小問(1)

1 Aは、C市に対して、本件権利取得裁決が無効であることを前提に、本件土地の所有権確認訴訟を提起することができる(4条後段)。B県は上記当事者訴訟によって、Aは本件土地の所有権を回復することはできる以上、無効確認訴訟の補充性を欠くと主張するがこれは認められるか(36条)。

2 「当該処分…目的を達成することができないもの」とは、他の訴訟の存在をもって否定されるものではなく、他の訴訟が存在しても真の紛争解決のために適切な場合も含むと考える。

3 たしかに、Aは上記当事者訴訟をもって、本件土地の所有権を回復することはできる。しかし、Aは本件事業認定の違法性を争っており、これを無効とするのが直接的ともいえる。また、無効確認訴訟は当事者訴訟と異なり、本件事業認定の効力に第三者効があり、任意買収が未だされていない者についても紛争を一回的に解決することができる。加えて、当事者訴訟と異なり、無効確認訴訟は釈明処分の特則を利用でき、審理の充実化を図ることができる(38条、23条の2)。そして、Aは無効確認訴訟によっても本件土地の所有権を回復することができる。したがって、無効確認訴訟による方が上記当事者訴訟よりも真の紛争解決のために適切といえるから、補充性を満たす。

4 以上より、AはB県に対して無効確認訴訟を提起できる。

第3 設問2小問(2)

1 裁量の有無

 法20条3号は「適切且つ合理的な利用」という抽象的な文言を用いている。これは、事業計画が土地の利用に資するかは、地域の事情に応じた専門的判断を要することから、知事に要件裁量を認める趣旨である。

2 Aは本件事業認定の際に、本件土地の自然環境の影響を考慮しなかったことは考慮不尽であるとの主張をする。

(1) これに対し、B県は、本件土地に特に貴重な生物が生息しているわけではないから、特段考慮する必要はないとの反論が想定される。

(2) しかし、本件土地の池はC市では珍しく様々な水生生物が生息しており、近隣の小学校の学外での授業に使用されていることから、教育を受ける権利(憲法26条)と関連して重要なものである。そうだとすれば、本件道路により本件土地の自然環境の影響は考慮すべきであり、このことを考慮しないでした本件事業認定は考慮不尽である。

3 Aは、本件事業認定の際に、道路工事による地下水への影響が考慮されなかったことは、考慮不尽であるとの主張をする。

(1) これに対し。B県は、本件土地での掘削の深さはわずか2m程度であり、地下水には影響がないと考えられるから、これを考慮しないことは正当であるとの反論が想定される。

(2) しかし、過去に本件土地で同様の掘削が行われた際、井戸がかれたことがある。本件土地では防災目的の井戸もあり、これが仮にかれた場合、生命・身体に重大な危険が生じるおそれがあることを加味すれば、B県は上記判断が正しいか調査すべきであり、これを怠って上記判断を行うことは十分な考慮がなされたとはいえず、考慮不尽である。

4 本件事業認定の際、B県が本件道路の整備により周辺環境への影響が軽微であると判断したことは誤りであるとの主張をする。

(1) これに対し、B県は平成22調査で本件道路の交通量は1日約3500台であることが判明しており、22年も前である平成元年調査は参照すべきでないことから、平成22年調査に基づいたB県の判断は正当であると主張する。

(2) しかし、平成元年から22年までC市の人口減少は1割未満にもかかわらず、本件道路の交通量が平成元年調査と比べ平成22年調査で35%となることは不合理であり、併催22年調査の正確性には疑問が残る。そのため、B県は再度の調査をしてかかる疑問を解消すべきであり、このような措置を取らないで安易に平成22年調査に依拠して上記判断をしたことは不合理である。よって、B県の判断過程には誤りがある。

5 仮に、平成22年調査が正当であるとすれば、良好な住環境が破壊してまで「道路ネットワークの形成」をする必要性はないとAは主張する。

(1) これに対し、B県は、本件道路の交通量は1日当たり約3500台であり、周辺環境への影響は軽微であり、「道路ネットワークの形成」の必要性はあるとの反論をする。

(2) しかし、「道路ネットワークの形成」の必要性は小さく、良好な住環境の利益を上回るものではないから、B県の比較衡量は著しく不合理である。

6 以上のとおり、法20条3号の該当性に当たって、B県の判断は考慮不尽や判断過程に誤りがある等、著しく不合理であり、裁量の逸脱・濫用が認められ、違法であるとAは主張すべきである。 以上

          

雑感

原告適格、処分性の問題が出ませんでした。

設問1

Bの反論としては、同一の機関でないことをあげるべきでした。自分は義務付け命令と戒告の違法性の承継が認められないことを少し意識してこの答案になりました。残念。

事業認定の告示については特に問題はないと思います。ここでは、事業認定ではなく収用裁決まで争わないとすることが合理的といえるかですね。

事業認定されれば、収用裁決がなされることは法をみれば明らかですし、事業認定の違法性を争うのであれば、わざわざ収用裁決まで待つ合理的理由は特にないと思います(紛争の成熟化)。もっとも、任意売却で決着をまずはつけるというAの意思を最大限尊重すれば、収用裁決まで待つのも合理的といえるかもしれません(もっとも、個人的には、事業認定が違法だと思っているのに、このような意思を尊重すべきかは疑問があります)。

Bの反論が甘いこともあり、まずまずの出来と予想。

設問2

二元説等いろいろ問題があるところですが、ここでは補充性の検討だけをすればよいという問題。

ここでは、Aは当事者訴訟として、本件土地の所有権の確認訴訟等を提起できます(基本行政法p360)。

釈明処分の特則はどちらも適用されるので特にメリットではないです。自分は準用が後段にあるのに気づかず書いてしまいました…。減点されると思います。

拘束力も両方適用されるのであまりにメリットではないと感じましたが…(直截的だとは思います)、基本行政法p360はこれを指摘してるので間違ってると思います

そうだと考えると、第三者効しかないです。文理上のみを注目すれば第三者効はないと考えるのが普通ですが、判例は肯定しています(百選212)。これを論じるべき問題だったのかもしれません。

正直よくわからないです。多分自分は出来てない答案です。

設問3

本案の問題。時間制限との関係でどこまで書いたかが評価の別れどころかと思います。

特に気になる点はないです。行政法は本案問題を時間制限により書けないことが一番やっちゃいけないことだと個人的には思っていたので、早々に設問2を切り上げました。

総評

相対評価であることを考えればA入るかなと思っていますが、Bでも全然驚かない答案です。設問2の受験生の出来次第。