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商法再現

第1 設問1

 1 甲社は、Dから株主提案の請求を受けているにもかかわらず(会社法(以下略)303条1項)、招集通知にその旨の記載をしていない。まず、Dの請求が適法であるか検討する。

(1)甲社は、取締役会設置会社であり(327条1項1号参照)、Dは平成24年から株式を有しているから「6箇月」前から株式を保有している。また、Dは、本件株主総会の「8週間」前に上記請求をしている(303条2項)。しかし、Dは持株要件を満たさない。すなわち、持株要件は請求時だけでなく招集通知が発せられるまでの間も満たす必要があるところ、Dは招集通知が発せられた時点で、「100分の1」以上の議決権を有していない(100/1200)。また、Dは、議決権は100個(100/10000)であり、「300個」以上の議決権も有していない(188条1項、甲社の定款)。

(2)したがって、Dの請求は形式上不適法である。

 2 もっとも、Dが持株要件を満たさなくなったのは、甲社が丙社に対して新株発行(199条1項1号)をしたことが原因である。そこで、Dを保護しえないか。

(1)これについて、会社が、株主の権利(少数株主権)を妨げることを目的として新株発行をした場合、権利の濫用として(民法1条3項)、例外的に、持株要件の母数に入らないと考える。

(2)では、甲社にそのような目的があったといえるか。

 Dの提案した議題は、取締役を新たに選任することを内容とするものであり(329条1項)、経営陣の支配権が変動するものである。そのため、現取締役であるAらが支配権の変動を嫌って、Dの提案を妨げる可能性は否定できない。また、本件株主総会の基準日は平成29年3月31日であるところ(124条1項)、甲社は基準日以後株式を取得した丙社の議決権の行使を認めている(124条4項)。これは、丙社の議決権を持株要件の母数に入れ、Dの持株要件を120分の1にすることで、Dの提案を妨げようとした可能性がある(303条4項)。

 しかし、甲社は、業績が好調であり事業を拡大するため、資金を調達する目的があった。また、丙社に対する新株発行は有利発行ではなく(199条3項)、適法に発行されている。加えて、甲社が丙社の議決権の行使を認めたのは、丙社の要請を受けてのことであり、取引相手の便宜を図ることも取引観念上、不合理とはいえない。

 このような事情を総合すれば、甲社は資金調達の目的で新株発行をしたと考えるべきである。

(3)したがって、甲社は上記目的を有していたとは言えず、新株発行の株式も持株要件の母数となる。

 3 以上より、Dは持株要件を満たさず(100/1200)、株主提案の請求は不適法であるから、甲社がその旨の記載をしなかったことは正当である。

第2 設問2

 1 損害賠償責任の有無

 Bは、423条1項により、任務懈怠に基づく損害賠償責任を甲社に対して負わないか。

(1)「役員等」であるBは、利益相反取引(356条1項2号、3号)たる本件賃貸借契約によって、甲社に1800万円(300÷2×12)の「損害」与えたとして、任務懈怠が推定されないか(423条3項)。

 ア 3号の存在から「ために」(356条1項2号)とは、名義を意味するところ、Bは丁社の代表として甲社と取引している(本件賃貸借契約)。Bは丁社の全部の持分を有しているから丁社と同視しうる。そのため、Bは自己の名義をもって、甲と取引したといえ、「ために」を満たす。したがって、本件賃貸借契約は利益相反取引にあたる。

 イ 本件賃貸借契約によって、甲社に1800円の「損害」が生じているから、Bは任務懈怠が推定され、本件ではそれを覆す事情もない。

(2)Bの任務懈怠によって、甲社は1800円の「損害」を負ったといえ、因果関係が認められる。

(3)甲社は、トラックの駐車場用地を確保することが急務であり、丁社の土地のみが適当であったことを考えると、相場より高く賃貸借契約を締結することも不合理とは言えない。しかし、相場の2倍という価格は行き過ぎである。そうすると、Bは本件賃貸借契約によって甲社が損害を受けることは予見できたといえる。したがって、Bは任務懈怠につき過失がある(428条1項参照)。

(4)以上より、Bは任務懈怠に基づく損害賠償責任を負う。

2 賠償額

  Bは、任務懈怠につき、「善意でかつ重大な過失」がないといえるところ、Bは甲社と425条1項所定の契約を締結している。そのため、Bは甲社の取締役であるから、賠償額が1200万円(600×2)に減額されうる(425条1項1号ハ)。

以上より、Bは甲社の株主総会の承認(425条1項柱書、309条2項8号)があれば、1200万円の損害賠償責任を負い、なければ1800万円の損害賠償責任を負う。

                                   以上

                                       

雑感

再現率は95%以上(作成日は試験終了後翌日)

設問1について

一瞬思いつかなかったが、まずは条文どおりに当てはめてみようとすると新株発行のせいで不適法になるとわかり、検査役選任請求と持株要件の判例(百選59)が浮かんだ。条文と会社設計を知ってますアピールのためできるかぎり条文は引いたつもりであったが、305条引き忘れてたのは残念だった。

 速報によると、持株要件の基準日を厚く論じてるみたい。自分は持株要件の基準日の争いとか知らず、普通に検査官同様招集通知まで維持すべきものだと思ってたから、この点はどうしようもない(江頭会社法p331を後日見たら総会終結時までとされていた)。この点を厚く論じてる人は素直にすごいと思う。

問題文見たら、目的濫用の可能性はほぼないなあとも思ったが、できる限りDの反論も取り入れるような感じで答案構成した。

設問2について

問題はスタンダードだと思うけど、本番の時は設問Ⅰが多少変化球なこともあったし、責任限定契約のせいでだいぶ惑わされた。

責任限定契約が7の事情でしっかり書かれてることからこれはがっつり書かないといけないという考えがこびりついて428条の存在は全く気付いてなかった。自分は自己取引認定してるから428条のミスはやっちゃいけなかった。

全体的に細かいミスはあるけど、皆できてないみたいなので相対的に浮いてほしいと願うばかり。