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H17-2 民訴

第1 設問Ⅰ

1 Xは、前訴でYに勝訴しており、前訴確定判決によってYに対して強制執行をすることができる(民事執行法22条1号)。そのため、Xは後訴を提起しなくても前訴確定判決によりYからA土地の明け渡してもらうことが可能であり、後訴を行う法律上の利益は特に存在しないのが原則である。よって、後訴は原則として訴えの利益を欠く。

もっとも、確定判決の原本の紛失や後訴の提起以外に時効を中断させる手段がない(民法147条1号)等の場合には、例外的に後訴を行う法律上の利益はあるといえるから、後訴の訴えの利益は認められる。

2 後訴の審理判断の対象としては上記1についてであり、それによって後訴の訴えを却下するか否か判断することとなる。

訴えの利益有りの場合

前訴と後訴の訴訟物は同一であり、前訴の既判力が後訴に及ぶ。この場合、後訴裁判所は基準時においては前訴の訴訟物たるXのYに対する所有権に基づくA土地明渡請求権の存在を前提に審理していくことになる。基準事後の変動が審理判断対象。

第2 設問2

1 Yによる後訴は既判力に反し、請求が棄却されないかが問題となる。

(1) 確定判決の判断の後訴の通用力たる既判力は、審理の弾力化・簡易化を図るべく、訴訟物たる権利関係の存否の判断について(114条1項)当事者間に(同条2項)生じる。そして、事実審の口頭弁論終結時までは当事者は訴訟資料を提出することができ、かかる時点までは手続保障が及んでいるといえるから、かかる時点が既判力の基準時である(民事執行法35条2項参照)。

(2) 前訴判決により、XY間で、XのYに対する所有権に基づくA土地明渡請求権の存在について既判力が生じている。

(3) 後訴の訴訟物はYのXに対する所有権に基づくA土地明渡請求権であるところ、これは前訴の訴訟物と同一・先決・矛盾の関係にない。そのため前訴の既判力は後訴にたいして及ばない。

(4) よって、Yによる後訴は既判力に反しない。

2 もっとも、Yの主張は前訴と重複するものであり、後訴は前訴の実質的な蒸し返しとして信義則により遮断されないか(2条)。

(1) 前訴で主要な争点として当事者が攻撃防御を尽くし、裁判所が審理判断した事項については当事者間で決着済みとの合理的な信頼が生じる。かかる信頼を反故する主張は権利失効の法理としての信義則に反し許されない。信義則の1内容である権利失効の法理

本件では事実関係が曖昧なのでこの部分が審理判断事項となろう。ここでも正当な信頼の基準日は既判力の基準日と同じ考えるのが妥当。

第3 設問3

1 前訴確定判決により、XのYに対する所有権に基づくA土地明渡請求権の不存在について既判力が生じており、それは当事者間のみに及ぶのが原則である(115条1項1号)。

2 もっとも、Zは前訴確定判決以後「口頭弁論終結後」、YからA土地の占有を譲り受けており、Zは「口頭弁論終結後の承継人」にあたらないか(同項3号)。

(1) 同号の趣旨は紛争の実効的解決を図る点にあり、前主による代替的手続保障により正当化される。そこで「承継」したかは紛争の主体たる地位の移転を基準に判断する。「承継人」とは、紛争の主体たる地位を承継した者をいう。

(2) 前訴では、XY間においてA土地についてYが明渡義務をXに対して負っているかで争っているところ、Yは当該義務がないとの判断が下されている。Yから占有を譲り受けたZもA土地について明渡義務をXに対して負うかという意味で紛争の主体たる地位を継承したといえる。したがって、Zは「承継人」にあたる。係争物たるA土地の占有を譲り受けていることから… 請求原因から考えるべき。この場合①X所有、②Y占有 ①X所有、②Z占有

3 したがって、前訴確定判決の既判力はZにも及ぶところ、前訴の訴訟物と後訴の訴訟物は同一であるから、前訴の既判力は後訴に作用する。そのため、後訴で裁判所は基準日において前訴訴訟物たる権利関係の不存在を前提に審理しなければならない。

よって、後訴の裁判所は、基準日以後の事情の有無を審理判断することになる。