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H27 商法

第1 設問Ⅰ

 1 引き抜き行為

「取締役」BがEを甲社から引き抜いて乙社に転職させた行為は、善管注意義務違反にあたり損害賠償責任を負わないか(会社法(以下略)423条1項)。

(1)ア 職業選択の自由憲法22条1項)に配慮し、社会通念上相当でない態様による引き抜き行為に限り、善管注意義務(330条、民法644条)に反すると考える。

イ Eは甲社の洋菓子工場の工場長を務める者であり、Eが突然退職すれば工場の操業が停止し、甲社の財産的損害は重大なものであることは、甲社の洋菓子事業部門の業務執行担当者であるBであれば当然に予期できた。そのため、BはEの代わりを見つける等して少なくとも甲社の工場の操業停止を避ける措置をとるべきところ、Bは何ら甲社の財産的損害の防止に努めていない。甲社のノウハウを活用するという目的の下、このような引き抜き行為を行うことは社会通念上不相当というべきであり、Bは善管注意義務違反が認められる。よって、Bは「任務を怠った」。Bは同事業が円滑に進むよう配慮する立場でもある

(2) Bの任務懈怠により当該措置をとっていれば損害がなかったという点で因果関係あり、甲社は300万円の財産的「損害」が生じており、Bには帰責事由が認められる(428条1項但書参照)。

(3) 以上より、Bは甲社に対して300万円の損害賠償責任を負う。

2 競業避止義務違反

「取締役」Bが乙社の洋菓子事業の指揮を執った行為は、競業避止義務(356条1項1号)に反し、損害賠償責任を負わないか(423条1項)。

(1)ア 356条1項1号の趣旨は、取締役が会社のノウハウ等を利用して会社に損害が生じることを防止する点にある。そこで、「会社の事業の部類に属する取引」とは、会社の事業と市場において競合し、会社と取締役との間に利益衝突が生じる可能性のある取引をいう。上記趣旨より、会社が事業ないし市場への参入に着手している場合も含むと考える。会社が実際に行い若しくは行おうとしている取引と目的物及び市場が競合する取引行為をいう。

イ Bは関西地方において洋菓子の製造販売業を営む乙社の顧問として指揮を執っている。甲社は関東地方で同事業を営んでいるだけでなく、関西地方への参入を図るべく市場調査を開始しておりその費用も支払っていることから、相当具体的に関西地方において洋菓子の製造販売業を行うことを計画しているという点で両社は競合している。Bは甲社のノウハウをよく知る立場にあるところ、乙社の事業に指揮をとっており、その対価として報酬を受け取っていることから、このBの行為はアドバイザーとしてその知識を取引していると考えるのが相当である。判例は経営してきたことで端的に取引と認定また、BはQ社との間でもチョコレートで有名なQ商標を独占的に使用する権利を取引している。これらの取引は関西地方で事業を始めようとする甲社との間では利益衝突が生じるおそれがあるものである。したがって、Bのこれらの取引は「会社の事業の部類に属する取引」にあたる。

Bの行為が実質的に経営(「取引」行為)にあたるというためには事実上の主宰者であることを適示すべき。だって代表取締役が普通は経営を行うのだからDが経営すなわち「取引」したといえちゃうじゃん。Bは「取引」したといえるか。

(2) 同号の上記趣旨からすれば誰に利益が帰属するかが重要であり、「ために」とは計算を意味する。Bは乙社の陣頭指揮を執っており、Bの取引行為はBの計算の下で行われているから、Bの「ために」なされたといえる。株式の9割保有(支配)→経済的利益。事実上の主宰者として、自己の計算で経営をしていた。

(3) Bは甲社の取締役であるA、Cに乙社の事業に携わる旨述べており両者から特段の異議を受けなかったことからこれを実質的に見て「取締役会」の承認があったといえるとも思えるが(365条、356条1項柱書)、Bはただ携わる旨を述べただけであり、甲社との競業の関係について「重要な事実を」一切開示していないことから356条1項柱書違反が認められる。よって、Bは「任務を怠った」。当該競業取引が会社の事業にどのような影響を及ぼすかを判断するために必要な事実

(4) Bは1200万円の利益を得ていることから(100万円×12)、甲社が受けた損害は1200万円であると推定される(423条2項)。帰責事由もBには認められる。損害はこれだけじゃないよね、推定規定は損害の1つでしかない。

(5) 以上より、Bは1200万円の損害賠償責任を負う。

第2 設問2

 1 甲社は丙社に対して洋菓子事業を第1取引及び第2取引を通じて売却しているところ、これは「事業の重要な一部の譲渡」にあたり、株主総会の決議を要するのではないか(467条1項2号、同項柱書)。

 (1) 第1取引及び第2取引は事業譲渡行うという目的の下で、その間が10日間しかないという連続的な取引であったことから、一体性が認められる。そして2億5000万円は7億円の「五分の一」以上を超えるから(会社法施行規則134条1項、法467条1項2号)、同号の規定の適用を受ける。従業員と取引先の引継ぎ、分断することにより決議潜脱の意図(S社反対)

事業の譲渡性

(2) 「重要な…譲渡」に当たるかは、量的・質的双方の側面から考える。

 洋菓子事業の時価は3億円、帳簿価格は2億5000万円と甲社の資産が7億円であることからも高額であり、また同事業は甲社が営む事業の2つのうちの1つであった。したがって、同事業の譲渡は甲社にとって「重要」であるといえる。前半が量的、後半が質的であることを明示しないと規範の意味ない。

(3) よって、本件事業譲渡は甲社の株主総会の承認を要する。

2 株主に重大な影響を与える事業譲渡につき特別議決を要求し株主保護を図った467条1項の趣旨及び事業譲渡に当たるのは限定され相手方に決議の有無を確認させるのも酷ではないことから、同項に違反した取引は絶対的に無効であると考える。467条1項の趣旨及び事業譲渡に当たるかは上記基準により比較的明確のため相手方に決議の有無を確認させるのも酷ではないことから譲受人の善意・悪意関係なく無効。譲受人からも無効主張可能(不安定)

3 以上より、第1取引及び第2取引は無効である。

第3 設問3

新株予約権の内容」に行使条件が含まれるのか。

238条1項1号と239条1項1号みれば、特別決議(309条2項6号)を要するとみるのが現場思考であろう。そうすると委任は不可能。寺田補足意見 実務

もっとも、行使条件は行使を制約するという意味で濫用の危険性は小さいうえに委任の趣旨による制約も課すことでその危険も防ぐことは可能。そうすると委任を認めることになろう。この立場は「新株予約権の内容」を236条1項各号に限定されると考えることで文言上の問題は回避する。多数説 もっともこれは現場思考じゃきついのでは…

 

委任不可の立場で進むと決議廃止の可否は問題とならない。

瑕疵ある手続により発行された新株予約権の行使により発行された株式の効力

非公開会社において株主総会の特別決議経ないやつはOUT

委任不可→新株予約権の内容たる行使条件については特別決議がなされていないということ→実質的に新株発行について特別決議経ていないといえる→無効という流れになるのか?

こうみると積極説のほうがよさそうに見える。時間があるなら取締役会の廃止の論点も進めるし結論先取りで積極説の理由を思いつければ書くほうがいいとも思えるが…受験生の相場からすれば上でも十分合格だろうか