氏名黙秘

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H21-2 刑訴法

第1 供述調書①

 1 供述調書①は、Aが甲に対して黙秘権の告知をしないまま、虚偽の事実を告げたところ、甲が犯行の自白をしたものであることから、「任意にされたものでない疑のある自白」として自白法則により排除されないか(刑事訴訟法(以下略)319条1項)。

2(1) 同項の趣旨は、類型的にみて虚偽の自白が誘発される状況の下でなされた自白を予め排除し、誤判を防ぐ点にある。そこで、「任意にされたものでない疑のある自白」とは、類型的に見て虚偽の自白が誘発されるおそれがある状況の下でなされた自白をいう。

(2) Aは、甲に対して、犯行現場の防犯カメラに甲が映っていた旨の虚偽の事実を告げている。このような取調べは、甲にとって、決定的な証拠を突き出された以上、仮に無罪であってもこれ以上アリバイを主張して犯行を否認しても意味がないと思わせるものであり、いち早く取調べから解放されたいとの思いから、自白を決意させるものであるから、類型的に虚偽の自白のおそれがある。また、Aは黙秘権の告知を行っておらず(198条2項)、このことは甲の自白の任意性を疑わせるものである。黙秘権の告知により心理的圧迫の解放がなかったと推認できる。

以上より、甲の自白は類型的にみて虚偽の自白が誘発されるおそれがある状況の下でなされた自白であり、不任意自白にあたる。

3 よって、裁判所は供述調書①の証拠能力を認めるべきではない。

第2 被害品

1 甲の友人宅で差し押さえられた被害品は、甲の自白を起点として収集された証拠物であり、これは自白法則により排除されないか。

2(1) 319条1項の趣旨は、上記のほか、虚偽の自白が誘発されるような取調べを将来的に抑止することも含む。そのため、このような取調べを将来的に抑止すべく、関連性の程度、証拠の重要性等を考慮して、不任意自白の派生的証拠も排除される場合があると考える。

(2) 供述調書①のみを疎明資料として捜索差押許可状が発付されている本件では、甲の自白がなければ被害品を発見することはできなかったといえるから、自白と被害品は不可分一体である。被害品が甲の犯人性を立証する上で重要な証拠であることを考慮しても、自白と被害品の関連性が強い本件では、被害品の証拠能力も排除すべきである。

3 以上より、被害品の証拠能力は認められない。

第3 供述調書②

1 供述調書②は供述調書①と同様の内容の甲の自白であり、いわゆる反復自白にあたるものである。そのため、反復自白の証拠能力が問題となる(319条1項)。

2(1) 反復自白についても、不任意自白と同様の判断基準で考える。反復自白についても、被疑者が類型的にみて虚偽の自白が誘発されるおそれのある状況でなされた自白は、不任意自白として証拠能力が否定される。

(2) 先行自白の際の取調べとは異なり、取調べ官がAではなくBであり、黙秘権の告知がなされている。しかし、甲からすればAもBも共に捜査機関の人物であり、黙秘権の告知が今更なされても、一度自白している以上撤回しても意味がないと考えるのが通常であるから先行の取調べの心理的影響から解放されたとはいえない。そうだとすれば、甲の後行自白は、Bが先行自白のことは忘れて一度自由な気持ちで供述するよう伝えた等の心理的影響を遮断させる特段の措置を講じていない以上、先行の取調べの心理的影響は遮断されておらず、残存しており、甲の後行の自白は類型的にみて虚偽の自白が誘発される恐れのある状況でなされた自白として、不任意自白にあたるというべきである。

(3) 以上より、供述調書②の証拠能力は認めらない。