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H16-2 民訴法

第1 設問Ⅰ

 1 甲債権及び乙債権が存在しており、Yの相殺の抗弁は認められるから、裁判所は、Xの請求を棄却すべきである。

2 確定判決の内容の後訴での拘束力たる既判力は、審理の簡易化・弾力化を図るべく、訴訟物たる権利関係の存否について生じる(民事訴訟法(以下略)114条1項)。口頭弁論終結時までは、当事者は訴訟資料を提出でき、手続保障が及ぶから、かかる時点が基準時である(民事執行法35条2項参照)。

本件では、基準時における訴訟物たる200万円の貸金返還請求権の不存在について甲と乙の間で既判力が生じる(115条1項1号)。

3 また、本件では相殺の抗弁が認められているため、114条2項による既判力も問題となる。同項の趣旨は、反対債権の二重行使の防止にあるところ、かかる趣旨から「相殺をもって対抗した」反対債権の不存在について既判力が生じる。対当額

本件では、甲債権に対して相殺をもって対抗した乙債権のうち200万円の不存在について既判力が生じる。

第2 設問2

 1 相殺の抗弁の要件の1つとして、自働債権の存在がある。本件では、自働債権たる乙債権は全額Xの弁済により消滅しているため、乙債権を自働債権とするYの相殺の抗弁は認められない。訴求債権たる甲債権は存在する以上、裁判所はXの請求を認容すべきである。

2 まず、200万円の貸金返還請求権の存在について既判力が生じる(114条1項)。また、相殺の抗弁の審理の際に乙債権の不存在が判断されているため、乙債権のうち「相殺をもって対抗した」200万円の不存在について既判力が生じる(114条2項)。

第3 設問3

 1 Xは、Yの相殺の抗弁の自働債権たる乙債権を受働債権として、丙債権との相殺を主張している。このような相殺の抗弁に対する相殺の再抗弁は認められるか。

 (1) 相殺の抗弁に対する相殺の再抗弁は、仮定の上に仮定が積み重ねられて当事者間の法律関係を不安定にし、審理の錯雑を招くため、認められないとするのが判例法理である。もっとも、これは裁判上の相殺の話であり、裁判外での相殺を主張したにすぎない場合は、実体法上の相殺の効果はすでに発生しているから、仮定の上に仮定が積み重ねられていることにはならない。そのため、この場合には相殺の再抗弁は認められる。

(2) Xの相殺の再抗弁は認められる。自働債権たる乙債権は丙債権との相殺により不存在となり、その結果Yの相殺の抗弁は認められないから、裁判所はXの請求を認容すべきである。

2 まず、200万円の貸金返還請求権の存在について既判力が生じる。また、相殺の抗弁の審理の際に乙債権の不存在が判断されているため、乙債権のうち「相殺をもって対抗した」200万円の不存在について既判力が生じる(114条2項)。加えて、114条2項の趣旨に照らして、丙債権についても「相殺をもって対抗した」200万円の不存在については既判力が生じると考えるべきである。

訴訟外の相殺も114条2項の適用の有無

相殺の審理の仕方

乙債権の存在が相殺の抗弁の成立の前提となる以上、乙債権の存否を確認すべく相殺の再抗弁の成否から審理をすべき。